1回うまくいかなかっただけで「無理」と言い、すぐあきらめてしまう。そんなお子さんの姿を見て、もうちょっとがんばってほしいのに、と思ったことはありませんか。
サイエンスデイズの授業にも、そういう子はいます。理科実験は、見た目はとても楽しそうですが、実は難しいところもあり、そのために合わない子もいます。
営業的配慮をするならば、そういった子たちに困難を与えないほうがいいのでしょうが、それでも私たちは、難しいことに出会ったときにも、ひと頑張りして、粘り強く取り組んでほしいと思い、子どもたちにとって難しいことにも挑戦をしてもらっております。
この記事では教室での出来事を交えながら、うまくいかないときに私たちがどう声をかけているかをお話しします。そしてそのことが、少しでもみなさんのお役に立てればと思います。
すぐに声をかけず、少し待ってみる
教室では、子どもが苦戦していても、すぐには声をかけません。少し待って、その子が次にどう動くかを見ます。
待っている時間は、その子が今どんなことに悩んでいるのかを観察する時間でもありますし、どのあたりまで自分の力で頑張ることができるのか、その匙加減を調整している時間とも言えます。
観察していると、不器用なわけではなく、少しの工夫でできるようになる子もいます。そのときは、やり方を伝えます。
声をかけたら終わり、ではありません。言われたことがしっかりできているか、そのあともしばらく様子を見ています。
つまずくところは、子どもによっても、実験によっても違います。道具の読み方でつまずく子もいれば、作業の長さを難しく感じる子、自分の考えを大したことがないと思ってしまう子もいます。3つの授業の場面をご紹介します。
ストップウォッチの読み方でつまずいた3年生

3年生の授業で、ストップウォッチを使って30秒ごとに記録を取ったときのことです。1分30秒と表示されているのを、130秒と勘違いした子がいました。
その子は、同じ失敗をしたくなかったのでしょう。記録の作業から離れて、楽な作業に移ろうとしていました。
そこで、表示の読み方だけを教えて、すぐにもう一度やってもらいました。ここで逃げないでほしかったからです。
最初の3分間は、記録が合っているかを講師と一緒に確認しながら作業を行いました。そのあとも間違えることはありましたが、最後には正しく記録できました。
すぐに完成しない、水ロケット作り

2年生の水ロケット作りは、1か月単位で進めます。いつもの授業とは、時間の長さが違います。
難しく感じる子が出てくるのは、始めたばかりのころよりも、途中の週です。
そういう子には、ここまでしっかりできていることを本人に伝えます。完成はまだ先でも、作ってきたパーツは確かに積み重なっています。
早く完成させたい気持ちは、良いことです。ただ、水ロケットでは、一つひとつのパーツを作っていくことが目標になります。子どもたちには、そう話しています。
資料作りでは、見方を変えてみる

小・中学生理科研究プレゼンテーションコンテストに向けた資料作りでは、考え方や言い回しを少し変えてみるよう声をかけます。
特に大切なのは考え方です。自分では重要ではないと思っていることも、ほかの人から見ればとても大切な考え方かもしれない、ということをお伝えしています。
資料作りで手が止まっている子は、書き方で悩んでいることもありますが、それと同じくらい多いのが、今考えている内容が本当に正しいのか分からずに迷っているケースです。
そこで、今どんなことで悩んでいるのかを聞いてみると、その考えがとても大切なものだと分かることがあります。
そういうときは、「まずは言葉にしてみよう」ともお伝えしています。自分の頭の中だけで考えるのではなく、言葉にしてみて、そのあとでほかの人に意見を聞いてみることです。
こうお伝えしておくと、同じように困ったときにも「無理」という言葉の前に「まずは書いてみよう」と、一歩進んだ解決策が思い浮かぶようになります。
少し良くなったら、さらにもう1回
やり方を変えたら、もう1回やってもらいます。1回目より少し良くなることが多いので、そうしたら、さらにもう1回。
ストップウォッチの子も、1回で読み方を覚えたわけではありませんでした。私たちが子どもたちに求めている「ひと頑張り」は、この繰り返しのことです。
泣いてしまったら、そこで止めます
ただし、加減は大切です。
例えば泣いてしまったときは、その作業を続けさせません。少し休ませます。粘り強く取り組んでほしいという思いはあっても、ここを間違えると、挑戦的なことが怖いものになってしまいます。
挑戦は楽しいものだと感じられるように、心に余裕ができてから、もう一度取り組みます。
結論を急がずにいる、ネガティブ・ケイパビリティ

「ネガティブ・ケイパビリティ」という言葉があります。分からないことや答えの出ないことがあっても、性急に結論を求めず、その状態にとどまる力を表します。
もとは、イギリスの詩人ジョン・キーツが1817年、弟たちに宛てた手紙の中で使った言葉です(キーツ財団の解説)。日本では、精神科医で作家の帚木蓬生さんが『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』(朝日選書)で紹介しています。
1回うまくいかなかっただけで「無理」と決めてしまう前に、その場にとどまってみる。教室で子どもたちに求めていることは、この考え方と通じるところがあると感じています。
ご家庭では、どこでつまずいたかを一緒に

家でもすぐあきらめる、というご相談を受けることがあります。そのときまずお伝えしているのは、「どこでつまずいたか一緒に見てください」ということです。
ストップウォッチの子なら、つまずいたのは表示の読み方でした。そこが分かれば、伝えることは一つで済みます。教室で最初の3分間を確認したように、ご家庭でも、やり方を伝えたらすぐに手を出さず、できているかをしばらく見ていてあげてください。
様々な場所で体験会やワークショップを行わせてもらっていますが、苦戦しているわが子を見て、こちらが声をかけるより先に手を貸してくださる保護者の方をよく見かけます。子どもが困っていると思っての手助けなので、正しいのだと思います。
ただ、いつも先に手伝ってもらっていると、やってもらうことが当たり前になってしまいます。そうなると、少し困っただけで、すぐに手を止めてしまうようになります。
最初にお話ししたとおり、私たちはそういうとき、声をかけるのをいったん待っています。自分の力でどこまで進めるのか、やり方を一つ伝えれば進めるのか。その子がどう反応するかを見てから決めたいのです。
そこで、お願いしたいことがあります。
もう一呼吸、見守っていただけると嬉しいです。
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