授業の様子

科学実験を利用した作文練習

科学実験を利用した作文練習

一般的にはあまり認知されていませんが、科学実験(理系)において作文能力(文系)は必須です。なぜならば、実験結果や考察を100人に読んでもらった際、その100人が同じ解釈をできるような文章を書かなければならないからです。

よって、科学実験を行うにあたって作文が得意に越したことはありません。

しかし、子どもたちに聞いてみると、ほとんどの子が作文を書くことを苦手だと感じているようです。

なぜ子どもたちは作文を苦手としているのはどうしてでしょうか。
その理由を聞いてみると「何を書いたらよいのかわからない。」という意見がほとんどでした。

そういった理由で作文が苦手だと感じているのであれば、科学実験は作文の練習に非常に向いていると言えます。
なぜならば、目の前で起こっている出来事をそのまま表現すればよく、「何を書いたらよいのかわからない」という状況にはなりにくいからです。

例えば、「水の色が変わった!」「黒い煙から白い煙に煙の色が変わった!」など。
目の前のことに集中すればよいのです。

このようにサイエンスデイズでは、科学実験を題材に作文を書く練習をすることで、作文の苦手意識を払拭する取り組みをおこなっております。

さて、作文を書くことに慣れてきたら、100人が読んでも同じ解釈をされるような作文を書くために次のステップを目指します。

  • 抽象的表現から具体的表現へ
  • 定性的表現から数量的表現へ
  • 主語と目的語がはっきりしている文章

1.抽象的表現から具体的表現へ

抽象的表現や具体的表現と言われても分かりづらいかと思います。そこで「カッターを使うときに注意するべきことは?」という問題について考えてみましょう。

本来であれば、「カッターの刃を出しすぎないようにする。」「ものを押さえる手をカッターから少し離しておく。」など具体的な案を書いていただきたいところです。

しかし実際には、「カッターを使うときに、怪我をしないように注意する。」など、質問文を言い換えただけの抽象的な回答を多くの子どもたちがしてしまいます

この状態から具体的なことが書けるようになるために、サイエンスデイズでは作文に力を入れるのではなく、まずは子どもたちにいろんな経験をしてもらうところから始めます。

先に挙げたカッターの使用も経験のひとつとなります。
そしてその経験を題材にした作文テーマ「カッターを使うときに注意するべきことは?」を提示します。

経験したことであれば具体的にどのようなことに注意をすればよいのかわかってきますので、無理なく具体的表現を書くことができます

以上のようにサイクルで作文の作成を繰り返してもらい、抽象的表現になりがちな作文から少しずつより具体的表現ができている作文を書ける授業を進めていきます。

2.定性的表現(抽象)から定量的表現(定量)へ

先ほどのカッターを使用するときの事例を用いて、抽象と具体の違いについて説明をしました。

ここからは科学実験における抽象的表現と具体的表現、つまり定性的表現と定量的表現の違いについて説明をしていきます。

例えば「水が熱い」もしくは「水が冷たい」と表現するのは定性的表現(抽象的表現)。「水温が10℃」もしくは「水温が90℃」と数字を使って表現するのが定量的表現(具体的表現)となります。

一方で「水温は10℃である」と定量的表現で伝えることで、実験結果を一意に伝えることができます。このように実験結果を誤解なく相手に伝えるためには、定量的に表現するということが大切になってきます。

当然、定量的表現をすぐに身つけることはできないので、いろんな科学実験の事例を用いながら少しずつできるように授業を進めていきます。

3.主語と目的語がはっきりした文章

紹介してきた具体的・定量的表現ですが、それだけでは実験結果などを正確に伝えることはできません。

具体的・定量的表現もたしかに大切ではあるのですが、あくまでも表現のひとつでしかなく、文章そのものがわかりやすくなければ、いくらそれらの表現ができたとしても自分の考えを相手に伝えることはできません。

例えば「時速15kmしか出ておらず遅い」という文章があったとしましょう。みなさんはこの文章を読んでどのように考えたでしょうか。

確かに時速15kmしか出ていないわけですから遅いように感じますし、先ほどの定量的表現がしっかりと出来ているので、これは文章として正しいような気がします。

しかしよく考えてみると、この文章には主語が無いため、何が時速15kmなのかさっぱりわかりません。

例えばこれが車の時速が15kmならば遅いと感じますが、もしマラソン走者の時速ならばどうでしょうか。
遅いどころか、かなり速い部類となります。

このように表現自体は正しくても主語が変わるだけで、文章そのものの意味は大きく異なってきます。
これでは相手に正しく実験結果などを正確に伝えることができません。

主語・目的語抜けがない作文が書けるようになるためには具体的・定量的表現の違いそれなりの作文作成を練習する必要があります。

サイエンスデイズでは各単元の内容にあった作文の作成を行い、その都度作文の添削をすることによって主語・目的語向けの作文から脱却を目指します。

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