親が理科を苦手でも大丈夫?子どもの『なぜ?』への関わり方

子どもに「なんで?」と聞かれて、答えが出てこない。教科書を見ても、自分が習ったころの記憶があいまいで、うまく説明できない。

そんなとき、「自分が理科を苦手だから、この子の興味を伸ばしてあげられないのでは」と心配になることもあるかもしれません。

そんな心配性な保護者のみなさまに
「子どもの疑問に付き合うために、親が理科の答えをすべて知っている必要はありません。」
とお伝えしたいです。

分からないことは、はっきり「分からない」と子どもに伝えても構いません。そのうえで、少し考えたり、一緒に調べたりしながら確かめていけばよいのです。

この記事では、答えに困ったときの会話例と、負担を増やしすぎない関わり方を紹介します。親の苦手意識と、子どもがこれから出会う理科の楽しさは、分けて考えてみましょう。

理科が苦手でも、子どもの疑問に付き合える

家庭では、知識を教える以外にもできることがあります。何が気になったのかを聞く、図鑑を一緒に開く、調べたことと目の前の様子を見比べる。こうした関わりなら、親も学びながら進められます。

文部科学省の家庭教育手帳でも、子どもの気持ちを受け止め、自分の考えを押しつけず、一緒に考え学ぶ姿勢が大切だとされています。これは、親がすべての答えを持つこととは違う関わり方です。

理科が苦手だったことを隠す必要もありません。「学校では難しく感じていたけれど、これは気になるね」と話すこともできます。自分の苦手だった経験だけで、子どもの興味の行き先を決めなくてよいのです。

一方で、興味を持ってほしいあまり、毎日の会話を理科の問題に変える必要もありません。子どもが何かに気づいたとき、その話に少し付き合うところから始めてみてください。

答えが分からないときは、どう返せばいい?

親子がコップの外側の水滴を見ながら、分からないことを一緒に考えている

「分からない」と伝えたうえで、次にどう確かめるかを示すと、会話を続けやすくなります。分かったふりをして、あいまいな説明を急いで作らなくても大丈夫です。

「コップの外の水滴はどこから来たの?」と聞かれたら

たとえば、冷たい飲み物を入れたコップを見て質問された場面なら、こんな会話が考えられます。以下は、実際の授業記録ではなく家庭での会話例です。

子ども:「コップの外の水は、どこから来たの?」
親:「たしかに、外側がぬれているね。どうしてか、今すぐには説明できないな。まずはコップの様子を、一緒に見てみようか」

この返し方なら、詳しい知識がなくても、子どもが見つけたことに目を向けられます。少し観察して考えたあとに図鑑を開き、説明とコップの様子を見比べてみてもよいでしょう。

子どもが「コップからしみ出したんじゃない?」と考えを話したら、「そう考えたんだね」といったん聞いてから、説明や観察と照らし合わせてみてください。子どもの考えを受け止めることと、その説明が正しいか確かめることは、両方できます。

毎回「どうしてだと思う?」と聞き返さなくてもよい

考えを聞くのは一つの方法ですが、質問のたびに聞き返すと、子どもが求めている会話とずれることもあります。すぐに答えを知りたいときもあれば、気づいたことを話したいだけのときもあるからです。

知っていることなら、短く説明して構いません。親が答えを伝えること自体を、避けなくてもよいのです。

話したそうなら「どこが気になったの?」、答えを知りたそうなら「一緒に見てみようか」。反応を見ながら選んでみてください。問いかけが続いて疲れてきたら、その日はそこで終えてもよいでしょう。

WebやAIですぐに答えを見つけるのは、得策とは限らない

親子がコップを観察し、考えをノートに描き、図鑑と実物を見比べている

分からないことがあれば、検索したりAIに尋ねたりして、すぐに説明を読むことができます。ただ、自分で考える経験を大切にしたいときは、答えを見つける前に少し立ち止まってみるのもよい方法です。

「何が分かっていて、どこが分からないのか」「ほかの説明も考えられるか」「どうすれば確かめられるか」。そうしたことを考える時間も、学びの一部として大切にしたいと考えています。

先に考え、あとで説明と照らし合わせる

53件の研究をまとめた2021年のメタ分析では、まず問題に取り組んでから説明を受ける学び方が、先に説明を受ける学び方より、全体としてよい学習成果につながっていました。ただし、小学2〜5年生では先に説明を受けるほうが有利な傾向もあり、年齢や課題に応じた手助けが必要です。

家庭なら、いきなり検索画面を開く前に、目の前のものを少し眺めたり、思いついた考えを話したりしてみる。そのあとに本や解説を見て、自分の考えと比べる、という順番が考えられます。これは研究を踏まえた家庭での関わり方の提案で、すべての疑問に同じ順番を当てはめる必要はありません。

AIで解けたことが、自分で解けることにつながるとは限らない

2025年に公表された高校数学の実験では、通常のチャット型AIを使った生徒は、練習中によい成績を出した一方、AIなしの試験では使わなかった生徒より成績が低くなりました。答えを渡すことを控え、ヒントを示すよう設計されたAIでは、その悪影響はおおむね抑えられていました。

高校数学での結果を、そのまま幼児や小学生の日常の疑問に当てはめることはできません。また、Web検索の害を示す研究でもありません。それでも、答えを得る便利さと、自分で考えて理解することは、分けて意識したいところです。

WebやAIを使う場合も、まず何が気になるのか、自分はどう考えたのかを残してから、説明と照らし合わせてみてください。AIの回答は、図鑑や科学館などの解説でも確かめるようにしましょう。

「分からない」を、悪いことにしない

子どもにいくつか質問すると、分からないところに出会ったとき、急に怒り出す場面もあります。そうした姿を見ていると、「分からないことは悪いこと」だと感じてしまっているのでは、と考えることがあります。もちろん、怒る理由をそれだけに決めつけることはできません。

だからこそ、親も「私もまだ分からないな」「ここから確かめていこうか」と話せるとよいと思います。分からないところが見つかったときも、子どもを試すように質問を重ねず、一緒に考えられるところを探してみてください。

分からず戸惑うことと学びの関係を調べた2014年の研究でも、戸惑いが理解につながるには、それを整理し、解決へ進めることが重要だとされています。子どもが怒ったり苦しそうにしたりしているときに、考え続けさせる根拠にはなりません。問いかけを止めて休んだり、ヒントや説明を加えたりしてよいのです。

大切にしたいのは、分からない時間の長さだけでなく、その間に観察したり、いろいろな考えを巡らせたり、確かめたりする経験です。今回確認した研究からは、「分からないまま長く過ごすほどよい」とまでは言えません。時間を競うことなく、分からない状態から少しずつ理解へ進む過程を大切にしていきたいと考えています。

一緒に調べるときは、疑問を一つに絞る

その場で気になったことを一つだけ確かめるくらいからなら、親も取り組みやすくなります。関連する仕組みまで全部説明しようとすると、大人にも難しい話になりがちです。

図鑑や子ども向けの解説を、手がかりにする

身近な自然や物の仕組みについては、子ども向けの図鑑や科学の本が手がかりになります。文章が難しければ、写真や図を見るところからでもよいでしょう。図書館で、年齢と知りたいことを伝えて本を探してもらう方法もあります。

観察したり考えたりしてから、説明を確かめるためにインターネットを使う場合は、子どもの言葉を少し具体的にして検索します。「コップの外がぬれる理由」「影の長さが変わる理由」のように、何について知りたいのかを入れてみてください。

検索結果では、誰が説明している情報なのかにも目を向けます。科学館・博物館、大学、公的機関などの解説を手がかりにし、内容が難しいときは、子ども向けの資料を探し直してもよいでしょう。上に表示されたページだけで判断しなくて構いません。

分かったことも、まだ分からないことも話してよい

読んだ説明を、親が完璧に言い直す必要はありません。「ここにはこう書いてあるね」「この図だと、どの部分のことかな」と一緒に見ていく方法もあります。

説明を読んでも分からなければ、「今日はここまでは分かったね。こっちは、もう少し調べたいね」で終えてみてください。分からない部分を、分かったことにしなくてよいのです。

家庭でできる小さな実験や、日常の習慣まで広げたい方は、記事末尾の「家庭でできる3つの習慣」も参考にしてみてください。

忙しい日は、あとで戻れる形にしておく

忙しいときに子どもの疑問をメモに残し、あとで親子が図鑑を見ながら考えている

すべての質問に、その場で答える必要はありません。料理中や出かける前など、付き合えないタイミングがあるのは自然なことです。

「今は手が離せないから、夕食のあとに一つ選んで見てみよう」と、できそうな範囲で伝えてみてください。紙やスマートフォンのメモに疑問を残しておくと、後で話題に戻りやすくなります。

時間ができたら、「さっきのコップの話、まだ気になる?」と聞くくらいでもよいでしょう。もう別のことに夢中なら、調べ学習を続けさせなくても構いません。

親が疲れている日もあります。調べられなかった日は、別の機会に戻ることもできます。毎日欠かさず取り組むルールにせず、親子が続けられる範囲を探してみてください。

宿題や難しい疑問は、家庭だけで抱え込まない

学校の宿題が分からない場合も、親が一から教え直す必要はありません。まず教科書や授業のノートを一緒に見て、どこまでは分かっていて、どこから分からないのかを整理してみてください。

解決できなければ、その疑問を先生に尋ねる準備を手伝う方法があります。問題文の意味が分からないのか、実験の結果と理由がつながらないのか。聞きたいところを具体的にするだけでも、次の相談につなげられます。

日常の疑問なら、図書館や科学館など、家庭の外に手がかりを探すこともできます。興味のあるテーマをもっと試したいときには、自然観察会や理科実験教室も選択肢になります。

親が理科を苦手だからという理由だけで、習い事を急いで決める必要はありません。子どもが何を知りたいのか、何をやってみたいのかを見ながら、合う場所を探してみてください。

よくある質問

子どもに「分からない」と言ってもよいですか?

言って構いません。「分からないから、まず一緒に見てみよう」のように、観察したり考えたりするきっかけも添えてみてください。その場で付き合えないときは、後で戻れるように疑問をメモしておく方法もあります。

調べた答えを親から教えてもよいですか?

教えて構いません。子どもが答えを知りたいときは、短く伝えてもよいでしょう。興味が続いていれば、見つけた図や説明を一緒に見てみてください。毎回、子どもに考えを聞き返す必要はありません。

子どもの疑問には、毎回実験で答えるべきですか?

毎回実験する必要はありません。本を読む、写真や図を見る、身近なものを観察するなど、疑問に合う方法を選べます。家庭で試す場合は、年齢や安全面、準備の負担も考えて、無理なくできるものにしましょう。

親も理科の宿題が分からないときは、どうすればよいですか?

教科書やノートを一緒に見て、どこから分からないのかを整理してみてください。解決できなければ、先生に聞きたいことをメモするなど、質問の準備を手伝う方法があります。親が一人で教え直さなくても構いません。

まとめ:親も、分からないところから始めてよい

理科が苦手でも、子どもの気づきを聞くことや、答えを探す手伝いはできます。知っていることは伝え、知らないことは少し観察したり考えたりしてから、一緒に確かめる。忙しい日は疑問を残して、後で戻る。そのくらいの関わりから始めてみてください。

次に「なんで?」と聞かれたら、「それ、私もすぐには分からないな」と言っても大丈夫です。そこから、何を見れば分かりそうかを一緒に考えてみませんか。

お子さまの状況や、次に知りたいことに近い記事からお読みください。

サイエンスデイズは、浜松市中央区で園児から中学生を対象とした理科実験教室です。

LINEをお使いでない方はお問い合わせページからもお申し込みいただけます。

参考:文部科学省「平成22年版家庭教育手帳 小学生(低学年~中学年)編」8.個性と夢(83ページ)。本記事の会話例や調べ方は、この資料を踏まえた家庭での関わり方の提案です。

この記事を書いた人

林田 亮のアバター 林田 亮 サイエンスデイズ代表

1984年浜松市生まれ。
静岡大学工学院工学研究科修了。大学院では、システム工学の立場から、人工衛星の軌道に関わるシミュレーションの研究に取り組んだ。
2012年にサイエンスデイズを創設し、年長から中学生までの子どもたちに理科実験と自由研究を教えている。

よかったらシェアしてね!