1.分光とは
えっと、「分光」って何ですか?
簡単にまとめると、混ざり合った光の色をもう一度分けることを「分光」と言います。
1.光の色が混ざる加法混色について
混ざり合った光をもう一度分けるってどういうこと?
「分光」について理解してもらうために、分光の前々段階である色が混ざる現象について説明をしますね。
まず光の色が混ざってできる混色の様を加法混色と言い、いろんな光の色を混ぜるほどに、だんだんと白色に近づいていきます。
例えば、赤色の光と青色の光を混ぜると紫色になります。
また、赤色の光と緑色の光を混ぜると黄色になります。
そして、赤色の光とと緑色の光と青色の光を混ぜると白色になります。
光の色の混ざり方である加法混色のより詳しいことは、リンク先にまとめてありますので、ぜひそちらを参考にしてください!
色の三原色と光の三原色の詳細
「私たちが認識している色は本当にその色なのだろうか?」その疑問に答えるには、「人間の色の対する認識」と「色の反射」について理解する必要があります。ここで色の三原色と光の三原色について学ぶことで、私たちが認識する色の真実に迫りましょう!
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2.分光の仕組み
結局のところ一度混ざった光の色をどのようにして分けるの?
光の色が混ざると違う色に見える現象が分かったら、次は「光の屈折」という現象についておさえておきましょう。
「光の屈折」とは、光が空気中からガラスや水中など別の物質に侵入する際に、光の道筋が折れ曲がる現象のことです。
もちろんガラスや水中から空気中に戻る際にも光の屈折は起こります。
この光の屈折ですが、イラストのように青色だと大きく屈折して、赤色だと少しだけ曲がらない特徴があります。
もう少ししっかり説明すると、青色など波長が短い光ほどより屈折して、赤色など波長が長い光ほど屈折しにくくなります。
このことを応用して赤色と青色を混ぜて紫色になった光の屈折を考えてみましょう。
さきほどお伝えした通り、青色は屈折しやすく、赤色が屈折しにくくなります。
そのため紫色の光の屈折をさえるとイラストのようになります。
紫色だった光が青色の光と赤色の光に分かれます。
このように一度混ざり合った光の色を分けるのが「分光」であり、分光は色の屈折の差を利用しています。
なお実際の分光に水を利用することはほとんどありません。
プリズムや回折格子などが取り付けられている分光器が利用されています。
「分光」とは混じりあった光をもう一度ばらばらにすることだよ。
色によって屈折の仕方が異なることを利用して、光の色を分けているということだね!
3.分光・分光器の必要性
光の色を分ける必要ってあるのかな?
見えている色だけで十分じゃないかな?
光の色で混色ができるという現実は人間にとって不都合なことでもあります。
その不都合なことについて、ここからは赤色と緑色の混色を例に考えてみましょう。
赤色と緑色を混ぜることで黄色の光を作り出すことができることは加法混色のところで説明をさせていただきました。
一方で、世の中には単色の黄色い光も存在します。
加法混色や光の三原色の話しを聞くとどうしても勘違いしてしまいますが、わざわざ赤色と緑色を混ぜなくても黄色の光を作り出すことはできます。
実はここに先ほどお伝えした不都合なことが存在します。
それは、人間は「混色で出来た黄色」と「単色の黄色」を見分けることが出来ないというとです。
「それのどこが問題なの」と思われる人もいることでしょう。
実際、普通に生活している範囲内で、混色の黄色と単色の黄色を区別できなくても特に問題はありません。
しかし、科学研究の範囲になると話は変わってきます。
黄色だと思っていたのに、実は赤色と緑色の混色でしたというのは、致命的なうっかりミスです。
見えている色は単色なのか、それとも実は混色なのか。
人間が認識している色の限界についてを知っているだけでも、色に対しての接し方が変わってくるのではないでしょうか。
人間は単色の黄色と混色の黄色を区別をすることができない。
だから、光の色をわける分光が必要なんだね!
2.分光で出来ること
分光って役に立つのかな?
ここまで、光の色を分ける分光の方法を説明してきました。
次にこの分光という現象を利用することでどのようなことができるのか、そのいくつかの事例を紹介します。
1.LEDの光と蛍光灯の光を分光で識別
まずは、同じ白色のように見える「LED」「蛍光灯」を分光器を通して見てみましょう。
それぞれの光を分光すると、このような結果になります。
LEDは緑色が少ないようですが、いろんな色がまんべんなく含まれているようです。
それに比べて、蛍光灯の光はより特徴的です。
すべての色があるわけではなく、特定の色のみで白色を再現していることがわかります。
前の章で、人間には単色の黄色と混色の黄色を区別できないことを説明しました。
黄色ではないですが、実際に同じような白色に見える光を分光器越しに眺めてみると、本当に使われている色に違いがあることがわかります。
2.気体の光を分光で識別
実は気体も光らせることができます。
「気体が光るってどういうこと?」
と驚かれる人もいるかもしませんが、
蛍光灯と同じようなものだと考えていただければ大丈夫です。
今回は水素と窒素と酸素の分光に挑戦をしてみました。
水素スペクトル
最初に水素の光を見てみましょう。
水素の光は赤色の光が相対的に強いようです。
窒素スペクトル
次に窒素の光を見てみましょう。
光っている色の感じは水素と似ているような感じがします。
ただ、分光器を通すと水素とは全く違う結果となっており、紫外線に近い光が相対的に強いことが分かりました。
酸素スペクトル
最後に酸素の光を見てみましょう。
ここまでの水素や窒素と違い、部屋を暗くしないと見えないぐらいの光しか確認できませんでした。
このように発光体のスペクトルを調べることによって、その中に含まれている気体も調べることができます。
3.吸収スペクトルを利用した水素の識別
水素・窒素・酸素それぞれに特有の光り方があることがあるように、それぞれの気体には「特定の波長を吸収する特徴」もあります。
例えば水素の場合、可視光領域においては410nm・434nm・486nm・656nmの光を吸収します。
仮に太陽光のスペクトルが紫色かか赤色まで、
まんべんなく存在する以下のイラストの通りだったとします。
この太陽光を、水素がある空気中を通過させます。
すると、水素が存在する空気を通過した太陽光のスペクトルは、以下の通りに見えます。
410nm・434nm・486nm・656nmのところに暗い線があります。
なぜこのような暗い線があるのでしょうか。
それは、水素に光を吸収されたからです。
空気中には水素以外にも酸素や窒素も存在するので、実際には水素による暗線以外にも多くの暗線が存在します。
ここで重要なのは、
暗線を調べることによって、空気中に存在する気体を調べることが出来るということです。
発光スペクトルだけではなく、吸収スペクトルについても知ると、分光という技術の奥深さが理解できるね!
3.まとめ
1.分光は色による屈折のしやすさの違いを利用しているよ!
2.分光器を利用ことで光の中にある本当の色を調べることができるよ!
3.光っているいろだけではなく、無くなっている色からも物質の特定ができるよ!
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